日本一の牛を飼っている人が、宮崎に牛を買いに来た。「日本一ってどんな人?」と興味が湧いて、会いに行った譲市さん。その人のもとで牛養いの修行をし、ゼロから肥育農家をはじめることに。35年後、自分の手で、全共7区で首席を取る牛を育て上げた。譲市さんの牛の養い方は自然体だ。ふかふかのおがくずの寝床を整えることも、決まった時間に決まった量の餌をやることも、「人と同じように、牛が気持ちよく暮らすため」というシンプルな理由から。
「よく寝てよく食べる」という健康的な暮らしを続けることは、人間でもむずかしい。シンプルなことほど、続けることはむずかしいのだ。だから、譲市さんは日本一になった。
和牛は、磨けば磨くほど光る“黒いダイヤモンド”と言われている。「一頭一頭異なる牛の能力を最大限に引き出すこと、それが肥育農家の腕の見せ所」と譲市さん。
20年前に、親友の大工につくってもらった牛舎は、牛たちが夏を涼しく過ごせるようにと、断熱効果が抜群。学生時代に戻った気分で、ふたりで熱く理想を語り合いながら設計した。