写真集の表紙にもなった渕本家は、三世代の大家族。誕生日はいつも、親戚や近所の友人たちも集まり、大きなバースディケーキを買ってお祝いする。その月に生まれた子どもの数だけ繰り返し歌う、バースディソング。牛舎では、働く大人たちを、わんぱくな子どもたちが追いかける。大家族の証でもある大きな笑い声も、牛たちは小慣れた様子だ。そんな渕本家にとって当たり前の日常は、かけがえのない時間。
サービスショット、写真集の中の一枚。たいじ君が頭にのせているのは堆肥混じりの泥?雨の中、お兄ちゃんのいっと君とふたりで、激しい団子投げ合戦を繰り広げていた。それを見て大声で叱り飛ばしていた父親の長男・太一さんだけれど、子どもの頃、同じように牛舎の周りを転げ回って一美さんに叱られていたと、あとでこっそり教えてくれた。
空と大地と牛と遊ぶ兄弟は、無邪気でわんぱく、瞳がキラキラ。
黒い服が太一さん、お隣が三男の優生さん。ふたりは削蹄師。足の爪は家の基礎部分のようなもので、800kgある牛を支える大事な身体の一部。そんな巨体の牛の足を抱えて爪を切る作業は、男らしい力技。「握り飯やったら10個食える」と、太一さん。毎日山盛りの白米を食べることが、牛と対等に向き合う秘訣。